2013 Taste of Tsukuba
~皐月の陣~
茨城県・筑波サーキット
5月12日(日)晴れ 路面:ドライ
サンクチュアリー本店レーシング
#39 PCM240 Z RACER I
D.O.B.A.R. SUPER MONSTER EVOLUTION
予選:3番手(1分01秒253)
決勝:2位
サンクチュアリー本店レーシングのPCM240 Z RACER Iの空冷4気筒・チューニングエンジンの咆哮が2008年以来、5年振りに筑波サーキットにこだました。
5月12日(日)に行われたテイスト・オブ・ツクバ、D.O.B.A.R. SUPER MONSTER EVOLUTION(以下、スーパーモンEVO)にエントリー。ライダーは、2008年と同じく上田隆仁選手だが、担当メカニックは“セカンドジェネレーションズ”と呼ばれる平成生まれの若手が中心となって臨んだ。レースの現場で多くのことを学び成長して欲しいという、サンクチュアリー代表の中村博行の思いであり、5年間休止していたレース活動を再開するきっかけでもあった。紆余曲折はあったものの、ライダーの上田選手が所有するKZ900フレームをベースに、2004~2006年に走らせていたZレーサー1号機を再生させた。もちろん、その足もとは、O・Zレーシングで固められている。
3月中旬に筑波サーキットでシェイクダウンを行い、タイムが縮まっていく度に、マシンには問題が起きる。その課題をクリアしながらピットイン・アウトを繰り返し周回を重ね、いきなり1分0秒6をマーク。コンスタントに1分0秒台で周回もできアベレージも高かった。「この調子なら、すぐに59秒台に入ると思う」と上田選手も饒舌だったが、このときは、まだ迷宮に入り込むことなど微塵にも思っていなかった…。
ニューエンジンの製作にも着手したが、エンジンのシェイクダウンは、5月に入ってからだった。しかし、ハイスペックのはずのエンジンが、うまく走ってくれない。T.O.T本番まで10日と迫っていただけに焦りは隠せなかったが、通常業務をこなしながらの作業は、確実に睡眠時間を削っていった。圧縮を変更し、バルブタイミング、マフラーも見直して臨んだ決勝4日前のテスト走行でも、ニューエンジンのセットは決まらず、ここで0秒台で走った実績のある練習用エンジンに載せ換える決断をする。
しかし、土曜日に行われた特別スポーツ走行は雨となってしまうが、練習用エンジンも調子がよくない。急きょパワービルダーさんのお世話になり、シャシーダイナモで燃調などのセットアップを行う。戻ってからも真夜中までマシンのメンテナンスを行い、いよいよ本番を迎える。
日曜日は、当初の天気予報では、雨マークがついていたが、快晴となり気温もグングン上昇していく。そして、まずは公式予選を迎える。コースインし、タイムを縮めて言う上田選手だが、計測2周目に1分01秒253をマークした後、ピットイン。気温、湿度ともに、コンディションが変わったため本来のパワーが出て来ない。もう一度、コースインするものの、すぐにピットに戻りマシンを温存することに変更する。
今回、スーパーモンEVOクラスにエントリーしているのは、5台。クラスでは、3番手タイムとなったが、参加台数の都合でHERCULESクラスとの混走で行われた。決勝を前に、コンディションに合わせて燃調をセットアップ。暖気場でレーシングしながらマシンの鼓動を聞く。
12周で争われた決勝レース。スタートは、まずまず決まるが、序盤の混戦でのリスクを避け冷静な走りでホームストレートに戻ってくる。6周目には、2つポジションを上げ単独走行となっていく。上田選手は、8周目に自身のベストラップとなる1分01秒394をマーク。しかし、当初の練習では、1分0秒台で周回していただけに、やはり完璧には、ほど遠い状態だ。レース終盤になり、前を走っていた松原選手にトラブルが発生。その差が、縮まってくると10周目のバックストレートでかわしクラス2番手に浮上。そのままチェッカーフラッグを受け復帰戦をクラス2位でフィニッシュした。
「予選のときよりは、レースの方が状態はよくなっていましたが、満足いく状態とは、まだまだ言えませんね。スタートは、3速合わせで、まずまずだったのですが、序盤の混戦で無理せずにいきました。レース中盤は単独走行になっていたのですが、松原選手に問題が起きたみたいで、どんどん差が詰まっていきました。クラス2位という結果でしたが、まだまだやることは、いっぱい残っていますね」と上田選手。
5年振りのT.O.T復帰戦は、不完全燃焼で終わった部分が多かったと言わざるを得ない。しかし、ここで得たものは必ず、これからのサンクチュアリーというショップに、スタッフそれぞれの人生に生きてくるはずだ。70年代のノーマルフレームをベースにしているマシンで、1分0秒台で走ること自体、普通のことではない。しかし、そこにチャレンジすることに価値がある。秋のT.O.Tに向けての戦いは、すでに始まっているのだ。